この記事を読んでいるあなたは
- 次亜塩素酸水って加湿器に入れていいの?
- 安全性は保証されているの?
- 加湿器噴霧はコロナに効果あるの?
上記のように考えているかもしれません。
この記事では、次亜塩素酸水を加湿器に入れることの是非や新型コロナウイルスへの効果についてお伝えしていきます。
次亜塩素酸水の加湿器噴霧―コロナへの効果と安全性
まずは、次亜塩素酸水の加湿器噴霧における、効果と安全性について解説します。
コロナウイルスへの効果は「わからない」
次亜塩素酸水を加湿器噴霧した際の新型コロナウイルスの効果ですが、実はまだわかっていません。
ドアノブなど物品の除菌方法としては、「一定濃度の次亜塩素酸水に限り有効」だと判明しています。しかし、空間噴霧となると話は別で、換気や3密回避よりも有効という証拠は、2020年9月現在発見されていません。
NITEや厚生労働省が、次亜塩素酸水の加湿器噴霧を禁止しているという声もありますが、それは誤りで、「言及していない」というのが実情です。つまり、効果があるともないとも言い切れない状態ですね。
安全性は比較的高い
次亜塩素酸水の加湿器噴霧の安全性は、比較的高いです。
介護施設などで以前からおこなわれている除菌方法ですし、次亜塩素酸水の性質上、吸引する濃度は決して高くないからです。
「次亜塩素酸水の加湿器噴霧」と聞くと、部屋全体に次亜塩素酸水が浮遊し続ける状態をイメージしがちですが、実際はそうではありません。
噴射された次亜塩素酸水の微細粒子同士は、吸着しながら徐々に落下していきます。
次亜塩素酸水が部屋全体に均一に行き渡ることはなく、「床に近いほど塩素濃度が濃く、天井に近いほど塩素濃度が薄く」なるのです。
つまり、人が吸い込む高さでは、ほとんど塩素は残りません。
さらに、きちんとしたメーカーであれば、安全性チェックをおこない、現場での濃度測定や除菌指導もしています。
次亜塩素酸水の加湿器噴霧は、正しい方法でおこなえば安全な除菌方法なのです。
「次亜塩素酸水を加湿器に入れないで」の真相
以前から活用されていて安全性が高い除菌方法である、次亜塩素酸水の加湿器噴霧。なぜ、「入れないで」という情報が広まったかについて、解説していきます。
厚生労働省が注意しているのは次亜塩素酸ナトリウムの噴霧
厚生労働省が「空間噴霧をおこなわないように」と呼びかけているのは、次亜塩素酸ナトリウムです。次亜塩素酸水の加湿器噴霧については触れていないことを理解しておきましょう。
次亜塩素酸水の加湿器噴霧について、厚生労働省は以下のように発表しています。
「次亜塩素酸水」の空間噴霧で、付着ウイルスや空気中の浮遊ウイルスを除去できるかは、メーカー等が工夫を凝らして試験をしていますが、国際的に評価方法は確立されていません。
安全面については、メーカーにおいて一定の動物実験などが行われているようです。ただ、消毒効果を有する濃度の次亜塩素酸水を吸いこむことは、推奨できません。特に、人がいる空間への次亜塩素酸ナトリウム水溶液の噴霧については、眼や皮膚に付着したり吸入したりすると危険であり、噴霧した空間を浮遊する全てのウイルスの感染力を滅失させる保証もないことから、絶対に行わないでください。
次亜塩素酸水については、「消毒効果を有する濃度で吸い込むことは推奨されない」と書いてあるだけで、加湿器噴霧を禁止してはいません。
危険だといっているのは、次亜塩素酸ナトリウムの加湿器噴霧についてです。
新型コロナウイルスの除菌に有効な塩素濃度は、拭き掃除で80ppm以上です。たしかに、この濃度を吸い込むのはおすすめできないでしょう。
ただ、加湿器噴霧では「空間の有効塩素濃度は0.5ppmまで」と決められていますので、濃度管理をしていれば有毒になるほどの濃度ではありません。ちなみに、0.5ppmの塩素濃度は、水道水と同程度です。
健康被害が起きているのは次亜塩素酸ナトリウム
実際に健康被害が起きたとして提出されているのは、主に次亜塩素酸ナトリウムを噴霧したケースです。
事故データバンクには、誤って次亜塩素酸ナトリウムを使用してしまったことによる健康被害があるほか、次亜塩素酸(水)による健康被害と捉えられる報告が上がっているとのこと。
しかし、被害報告を見てみると、「作成した次亜塩素酸水を使用」「次亜塩素酸を噴霧」と書かれています。
次亜塩素酸ナトリウムも次亜塩素酸水も、「次亜塩素酸」が含まれているため、この報告者がどちらを使用したのか不明瞭です。
さらに、家庭で生成した次亜塩素酸水は、安全性チェックをおこなった商品ではありません。出来上がった液体が、正しい濃度とpH値になっているかどうかを確認するのも難しいでしょう。誤って、アルカリ性に偏った液剤を加湿器噴霧してしまえば、健康被害は免れません。
多くの次亜塩素酸水メーカーが「顧客からそういった報告は受けていない」としていることから、液剤の管理ができていない状況下で使用したことが原因と言えるのではないでしょうか。
「加湿器に入れないで」は誤った使い方を防ぐため
「次亜塩素酸水を加湿器に入れないで」の言葉には、以下のような前書きが入ります。
- 新型コロナウイルスに効果があるか判明していないから、~
- 間違えて、次亜塩素酸ナトリウムを入れてしまう可能性があるから、~
- 塩素濃度やpH値が確認できていないものを入れてしまう可能性があるから、~
次亜塩素酸水の加湿器噴霧自体が危険なのではなく、「誤った使い方をしてしまうと危険」なのです。
次亜塩素酸水を加湿器に入れるときには注意が必要
最後に、次亜塩素酸水を加湿器に入れる際の注意点を3点、お伝えします。
一般的な加湿器に入れるのは推奨されていない
そもそも、次亜塩素酸水は、どの加湿器に入れても良い液体ではありません。
たとえば、次亜塩素酸水は高温に弱いため、加熱式加湿器は使えません。さらに、次亜塩素酸水を適切な濃度に希釈したあとは、1日で噴霧しきる必要があります。市販の加湿器には専用フィルターがないため、水道水のpH値によって状態が変化してしまうからです。
また、次亜塩素酸水の生成は、「希塩酸」もしくは「塩」を原料としますが、どちらを使用しているかで機械への影響も異なります。
次亜塩素酸水という名称だけで、空間噴霧に使用できる・加湿器に入れられると考えるのは危険です。
信頼できる液剤メーカーから、次亜塩素酸水と専用噴霧器をセットで購入するのが、一番安全な方法と言えるでしょう。
濃度を確認できない環境での使用は危険
空間の塩素濃度は0.5ppmという指標があり、メーカーの現場指導や濃度測定があれば、安全性は保たれます。しかし、家庭では、空間中の塩素濃度やpH値を正しく測定するのは難しいでしょう。
次亜塩素酸水は、環境によって性質が変化しやすい液体です。購入したままの塩素濃度やpH値をずっと保てるわけではなく、メーカーからも「使用前には濃度とpH値を確認すること」という注意書きが出ています。
拭き取り用の除菌剤として使用するのであれば、専用のリトマス紙や塩素濃度測定器で、液体そのものを確認すれば良いでしょう。
しかし、空間の塩素濃度チェックとなると、「販売元のサポートなしには難しい」と言わざるを得ません。
安全性が確認できない次亜塩素酸水に注意
厚生労働省も注意喚起していることですが、新型コロナウイルスの流行に伴って、安全性が確認できない次亜塩素酸水が出回っていることにも注意が必要です。
下記のような次亜塩素酸水は、購入しないほうが良いでしょう。
- 安全性チェックをおこなわずに、「次亜塩素酸水は安全」という一般論のみで売っている商品
- pH値の表記がない商品
- 製造元の表記がない商品
- 生成法や原料の表記がない商品
- 注意書きがない商品
- 消費期限の表記がない、または、極端に長い商品
次亜塩素酸水の加湿器噴霧を素人判断でおこなうのはやめたほうが良い
次亜塩素酸水の加湿器噴霧は、コロナ流行以前からおこなわれてきた、安全性の高い除菌方法です。
しかし、新型コロナウイルスへの効果は未だ証明されておらず、空間噴霧だけに頼った感染症対策はおすすめできません。
また、塩素濃度やpH値の確認をおこなわずに噴霧すること、次亜塩素酸水に対応していない加湿器を使用することは、危険です。
「次亜塩素酸水を加湿器に入れて空間除菌する方法があるらしい」という、聞きかじった情報のみで実行するのは、やめておいたほうが良いでしょう。
次亜塩素酸水の加湿器噴霧をおこないたい場合は、プロの指導のもと、正しい方法で実施することをおすすめします。